日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

4月25日(土) 本の仕事の矜恃

胃腸の具合はあと一歩というところ。ほんとうは今日も、ご近所でたくさん売られているお弁当を買いに行きたいところだったけれど、自粛。

外出自粛のなか、ドライブスルーで買うことが難しい商店街や大通りの飲食店さんのテイクアウトはさらに大変だろうと思う。せめて近所に通勤している自分のような者だけでも…と思うのも正直な気持ちだが、まず純粋に、いまのわたしにとって貴重な楽しみの一つなのだ。

 

夕方、思いがけないメールが届く。年明けから1か月近く、古書フェアに呼んでくださった正文館書店知立八ツ田店さんから、急遽5月いっぱい開催することになった古書フェアに参加しませんか、というお誘いだった。

店を休み、あらゆるイベントがなくなった今、お客様に本を手に取ってもらい販売するチャネルを失っていた当店にとって、この上なくありがたいお話。反射的に、ぜひお願いします、と返信を書き始めた。

しかしこの試み実現の裏には、いろいろな葛藤や悩みを抱えながら日々店を開けてくださっている書店スタッフの方々がいる。ちょうど昨日、そうした書店員さんたちの苦悩について、新聞記者さんからも聞いたばかりだったじゃないか。

深い深い感謝とともに送ったメールに、すぐ返信をいただいた。

「本の力を、いま、多くの方が求めている気がします。自分に出来ることがあれば、していけたらと思います。」

医療従事者の方はもちろん、物流や生活必需品小売業など、悩みやストレスの大きい中、それでも目の前の患者やお客様のために、と、心身を削るように働いてくださっている方々。そうした方々と同じような強い気持ちに突き動かされ、書店員さんも今、本に向き合っておられるのだ。命に関わらない、たかが本を売っているだけなのに大げさな!という声はあるだろう。その意見もわかる。ただ、同じく本を仕事にする者として、その矜恃は、とても力強く響いた。

いつも以上に切実に本を求めるお客様に、新刊とはまた異なる古書の面白さを楽しんでいただけたら、という純粋な思いで企画されたというこの古書フェア。あまりにも準備期間が短いので初日にどれだけ間に合うかわからないけれど、期間中少しずつであっても、充実させていきたい。お客様と、正文館書店の皆さんに、できるだけ喜んでいただきたい。本を手にしたひとときだけでも、心が穏やかに過ごせますように。

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