日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

4月12日(日) 悲しくて正しい日曜日

そろそろ日付や曜日の感覚が無くなってきた。店を開けていれば、まちの様子やお客様の数で曜日が分かるのだけれど。今日は月曜だから日中はお客さん少なめだな、とか、明後日は第3日曜でサンビルだから、店にたっぷり本を出さなきゃな、とか。かろうじて、基本的にはこれまで通りのシフトで来てもらっているスタッフさんの顔ぶれで、曜日に気付く。

柳ケ瀬セブンイレブンへ、昼ごはんを買いに行こうとした。店を休んでからも弁当を持参していたので、買いに出るのは久しぶりだ。

道に出てすぐ、異様さに気づいた。商店街を通り抜ける車がいない。自転車に乗った若者も、手押し車を押すおばあちゃんの姿もない。そもそも、まったく人の気配がない。柳ケ瀬に向かって歩きはじめても、まちは静まりかえっている。歩行信号機の音が、交差点に響き渡っている。真夜中か早朝のように。日曜日だというのに。

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大通りにも人の姿はほとんどない。セブンイレブンは、いつも賑わっていたイートインスペースが封鎖され、トイレも使用禁止になっていた。なんだか食欲が無くなり、ビニールのカーテンが垂らされたレジで、サンドイッチとカフェラテを買って店に戻った。

岐阜の中心部は終わってる、柳ケ瀬なんてゴーストタウンだ、そんなことをよく言われてきた。正確に言えば、徒然舎は柳ケ瀬商店街ではない。アーケードの下に店はない。でもわたしにそう言う人たちにとっては、全部同じようなものなのだろう。悔しいと思いながらも、店に足を運んでくださる方々が確かにいらっしゃること、中心市街地といわれるこのエリアに親しんでくださる方は着実に増えてきているということを毎日目にし、肌で感じることで、自信をもててきたからこそ、気にしないでいられた。そんなわたしにとって、この風景はものすごく、衝撃だった。

またこのまちに笑顔が戻る日はいつになるんだろう。入れ替わり立ち替わりご来店があり、店内がぎゅうぎゅうで申し訳ない、なんて日は、また戻ってくるんだろうか。先のことはわからなさ過ぎて、なにも考えずに漠然と祈ることしかできなくなった。

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店に戻ると、休業されているはずのお隣OGUTEIさんに灯りが見え、いい匂いが漂ってきた。試作をされているのか、熱心に手元を見るご主人の顔がちらっと見えた。それだけのことだったけれど、すごく安心していた。すぐそばにも、前を向いて、耐えて、がんばっている人がいる。

店の灯りを全部つけた。入口側のテーブルを作業台にして、本の仕分けを始めた。もしかして何かのついでに店の前の道をお客様が通ることがあったら、真っ暗で静まりかえっているより、明るくて、店主の気配があった方が、安心してくださるのではないかと思って。