日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

12月18日(月) ハスミン

今日も外は冬だった。やっぱり冬になったのだ。

朝礼のあと、スタッフAさんから「これから毎朝40分くらいみんなで"中掃除"しますけど気にしないでください」と言われ、ありがとうーと言う。われわれだけだったら、なんだかんだと理由をつけてはやらずに済まそうとする大掃除だが、「今年はしっかりやりたいです!」と宣言される。ありがたい。

パソコンの前で事務をぽちぽちするが、集中できない。12時から、久しぶりに取材らしい取材を受けるので、どうにも落ち着かない。難しいものでもないし、よく思われたいとかいうものでもないので、今さら緊張する必要もないのだけれど。

 

開店してすぐ、取材の方がご来店。店内の立ち話で良いかと思いきや、「できればゆっくりお話を伺えれば…」とのことで、急遽、作業場へ案内する。入るや否や、積まれた本の山に興奮して、身を屈めたり覗き込んだりされている。「朔太郎の文芸文庫!これ欲しいなあ!」「あ!『日本列島改造論』があるじゃないですか!いま値段つけていただいたらすぐ買います!」矢継ぎ早に話される様子から、これはかなりの古本好きの方だな、とわかる。

それにしても若い、と思っていたが、わたしが就職した年を話すと「あ、僕の生まれた年だ」と仰った。なんとも若い。わたしの半分だ。

文学がお好きそうだったので、小学5年の頃、学校の図書室にあった芥川龍之介地獄変』に衝撃を受けてみんなに薦めまくって流行らせたエピソードを話すと、爆笑される。「小学生で芥川!地獄変!早いですって!」

あれこれ聞かれながらも、リアクションや言葉の端々に、文学好き、本好き、本屋好き、古本屋好きな感じがひしひしと伝わってきて、こんな感じの人、いたよなあ……と考えていたら、学生時代、文学部国文学専攻の同級生たちだと気づいた。唐突に、なんとなく斜に構えたこと言っちゃう感じも懐かしい。こんな雰囲気の男子、いたなあ。だんだんなんだか楽しくなってきて、ペラペラ話し続けてしまい、あっという間に時が流れた。

店内で写真を撮られ、帰り際に『日本列島改造論』を作業場から持ってきて急いで手入れして、お売りする。嬉しい!と喜んでいただいたそのままの流れで、じゃあこれも気になるし買います、と、叢書ウニベルシタスも買ってくださる。勢いで叢書ウニベルシタス。さらに、カウンターにあった文庫に手を伸ばし「あ!ハスミン!これもください」とレジへ。ハスミン!一体いつぶりに聞いた言葉!「ハスミン、わたしが学生時代に『小説から遠く離れて』が文庫化されて、みんな読んでましたよ。東大総長にもなった頃だったし、ほんとスターでしたよ」とお話しすると、もう、とっても嬉しそうにされていた。…ずっと、そんなふうでいてほしい。きっと、難しいのだろうけれど。

懐かしい空気感の熱に浮かされてふわふわしながらその方を見送り、帰られた後、スタッフさんに「それで、いつ掲載されるんですか?」と聞かれて気づく。その話、ひとことも聞いてないや。

f:id:tsurezuresha-diary:20231220011019j:image夜、デザイナーさんとの打合せで久々に行ったファミレスに、いつの間にか、ガストに似た配膳ロボットが配備されてて驚いた。

 

  • 今日聴いたもの…83 Lightning Catapult(Podcast)(いきいきしてるふたり、とくにアルピー酒井がいい)、サスペンダーズの馬場歩きPodcast)(聴くものがほんとうになくなった時に少し聴き出している。ちょっと面白い。でもちょっと早稲田感強い)