日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

10月14日(土) かっこ悪いけどヘロヘロになるまで働く

久しぶりの店。久しぶりの岐阜市美殿町40番地。当然、岐阜高島屋の件は、うちのスタッフにも、商店街の人たちにも、まちを歩く人たちにも、多分うちの店に足を運んでくださるお客様のほとんどにも、届いている。そんな立ち話が外から聞こえてきたりもする。それぞれの心にそのことが引っかかっていて、どこかまちが、ふわふわとしているようにも感じた。

作業場の隣の、夏に閉店された大文字さんの前に人がいる、と思っていたら、女将さんが店にささーっと入ってきて「おたくトイレは直された?」とおっしゃる。場所を引き継ごうとされている方が、工事業者と一緒に見に来られていたようだった。われわれもいろいろ泣かされてきた(主に工期と費用に)、古ビルならではの難題を目の当たりにして、ちょっと弱気になられているようだった。井戸水、水道、ガスなど、工事のことを少し立ち話する。

f:id:tsurezuresha-diary:20231015011937j:image

スタッフの健診のこととか、産休中のスタッフが取り次いでくれた買取の相談とか、公費注文の書類押印とか、ご近所のお店の方から買取のご紹介を受けたりとか、常連さんの店頭買取とか、商店街で来週ある焚火イベントのチラシを受け取ったりとか、公式LINEでの買取問い合わせへの対応とか、いきなり壊れたプリンターの注文とか、順番にやっていたら、ほとんど本に触れずに一日が終わってしまった。こういう日は、きちんと仕事はしたはずなのに、なんとなく充足感がない。

夏葉社さんの新刊は、詩を愛した古本屋さんの随筆集とのこと。この時代に函入りの本をつくる夏葉社さんの気概には感動する。『昔日の客』も読んだが、自分が「古本屋」としてやっている仕事と比べてしまい、恥ずかしくなってしまったことが大きく心に残っていて、詳しい内容が思い出せない。もちろん自分は自信をもって、自分の仕事をしているのだけど、文学を愛し、人も愛し、お金にはさほど拘らず、本を読み、撫で、大切に売ってきた古本屋の先達たちの文章を前にすると、どうしても、さっき書いたみたいな仕事で終わる日々を過ごしている自分を卑下してしまうので、実は苦手なところもあったりする。

べつに古本屋で大儲けなどできない。それでも毎日ヘロヘロになるまで仕事をしているのは何故なんだ、と時々自分に問うが、「より多くの人に、より多くの本を、きちんと届けたいから」という答えが、いつもすぐに出る。働けば働いただけ、人にも本にも、より多く、喜んでもらえる。一冊ずつ丁寧に、流れ作業ではなく誠実に、大切な本を、それを待つ人に届けたい。そのために必要な、見えないところにあるたくさんの作業は厭わない。

自分は自分の道を信じて、ぶれずに進んでいく、積み上げていくしかない。それが一番強いよ、と、昼にTVerで見た「やすともの いたって真剣です」でチュートリアル徳井がダイアンユースケにも言っていた。