日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

西武池袋の日々 8月15日(火)

さあ、始まる。

テレビをつけると、東海地区には台風が迫ってきていて、新幹線も大変なことになっているらしい。昨日早めに閉店することにしたけれど、スタッフはちゃんと実家に帰省できたかな、と気になる。

とにかく落ち着かない。すぐ近くにいるのだし遅刻することはないのだけど、初めての催事、初めての会場、初めて会う方々、色々考えてしまい、緊張が昂まっていく。ヨーグルトをなんとか胃におさめ、少し早めに搬入に向かう。

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西武百貨店の搬入口は、明治通りにおもむろに開いていた。池袋駅から往来座に歩くとき、前を通っていたはずなのに、気づいていなかった。こんなに大きいのに。

ジェントルな係の方に入構証を見せて進む。暗く重く続く搬入口。にこやかに笑う煌びやかなビルでの催事の際、その裏側の、剥き出しの真顔を感じられるのが、いつも嬉しい。

うさぎ書林さんの姿を見つけほっとしたのも束の間、怒涛の搬入が始まる。まったくの無風の搬入口は、何もしていなくても汗が吹き出す。キャラバンいっぱいの木箱、コンテナを次々下ろしていく太閤堂。TOKYO BOOK PARKでもお世話になっていたというアルバイトのTさんがカーゴを持ってきてくださり、ご挨拶する。とても明るい方で、また少し緊張が解ける。

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カーゴ4台になんとか本を下ろした後、車をホテルの駐車場に停めに戻る。西武百貨店の前を通り、ああ、最近ずっとニュースで見ている建物だなあと改めて思う。良くも悪くも、昭和の顔をしている。

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徒歩で戻り、そこからは無我夢中の陳列。今回新しく作った木箱は、そのまま積めばいいように並びを整えて詰めてきたので気持ちが楽だ。が、それ以外の部分はいつものように、会場の雰囲気を見たりお客様の流れを考えたりしながら本を組み合わせ、即興で並べていくことになる。猛スピードで考え、作業し、時に一からやり直す。頭も身体もフルで使うこの時間は、信じられないほどのアドレナリンがわたしを動かしていく。インプロビゼーション、なんて言葉が頭をよぎり、その気持ちよさでなんとか気力を奮い立たせる。

割り当てられたブース横に棚を置けるのでは、とわかり、太閤堂は近くのコーナンへ追加で棚を買いに向かう。その間はひとりで黙々と作業を続け、苦労してコーナンから棚と木箱を持ち帰ってきた頃には、なんとか(わたしには)先が見える状態にまで陳列はできていた。

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12時過ぎの搬入から約8時間。期限の20時の少し前に、なんとか納得のいく陳列をすることができた。補充用にコンテナ4つほどを残し、適度にミチミチに、本を出しきった。

全力で用意した本を、全力で並べたので、わたしにとっては、この催事についてはもう9割は仕事が終わった気持ちだった。売れるかどうかは、始まってみないとわからない。ただ、売れるということは、うちの棚を、本を、支持してくださる方がいるのを目の当たりにできるということ。

売れますように、と思いを掛けて、会場を後にした。

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こういう時くらいは、と、閉店間際の築地玉寿司でにぎりのセットを頼む。ウニが美味い。甘海老が美味い。寿司は美味い。