日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

9月22日(木) 「古本屋」の世界と「社長」の世界

すっかり肌寒い。最高気温が23度予報。手帳を見ると、月曜は32度予報だった。一気に10度とは。半信半疑な気持ちで、Tシャツではなく長袖シャツを着る。外に出たらちょうど良かった。

明日が祝日なので、いつも月末にある税理士監査が今日になる。それをわかっていたはずなのに、15時までの両替を逃してしまい悔しい。

監査を進めてもらっている間、火曜に買った本の仕分けを、駐車場の車の中で。別の場所に荷下ろしするより一手間少ないし、ちょっと非日常なくらいがやる気が出る。真っ最中に、隣に停めている商店街理事長ご夫妻が来られてしまい「あら、こんなところで」と驚かれてしまったのはちょっと恥ずかしかった。買った本は、覚悟はしていたもののマーカーや赤ボールペンでがっつり線が引かれているものも多く、くやしい。祈るように検品した「定本 尾崎翠全集」は上下巻とも状態が良くてほっとする。明日でなんとか仕分けは終われそう。早くTOKYO BOOK PARKの追加を作らなければ。

仕分けの合間に、スーパーで買ってきてもらった冷凍ナポリタンとミニサラダ。お隣のOGUTEIさんから漂ってきたトマトソースの匂いを嗅いでいたら、むしょうにナポリタンが食べたくなってしまったのだ。

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夕方、監査の結果を聞く。8月、猛暑の中みんなでがんばってつくった売上は、評価されつつも、半期をトータルすると、まあトントン、ということに。今期を黒字で終えるための後半期の売上目標を示されるが、それがまあなんとも、店頭も通販も市場もイベントも、全方向にフルスロットルで取り組んだらなんとか?みたいな額で。途端に気持ちが萎えてしまい、そのうちなんだか腹が立ってきて、投げやりな気持ちになってしまった。社長のわたしがそんなことではいかん、と、わかってはいるけれど、如何ともし難い悲しさ、悔しさ。やる気がなくて何もできなくて結果が出なかったというのよりも、やる気いっぱいで一生懸命がんばって結果が出たと思ったら「ふつう」と言われたほうがしんどい。

もちろん現状分析はありがたいし、会社が潰れないために目標を設定してもらえるのもありがたい。しかし我々は上場したいとか、すごい配当を出したいとか、タワマン勝ち組になりたいとか、FIREとか、そういう世界観では生きていない。なるべく多くのみんなの安定と幸せのために法人になったまでで、アイデンティティとしては「古本屋」なのだ。この感じは、どこまで税理士さんに伝わっているのか。自己資本比率とか借入金月商倍率とか、そりゃあ大切ではある、理解はしている、けれど、あらゆる数字に振り回されながら仕事をするのはとてもつらい。そしてスタッフには、そんな思いをさせたくない。

それが社長の仕事だよ、と言われれば、まあ、そうなんだろう。世にはたくさんの社長がいて、それぞれの世界がある。本を買って売る事業を手がけている会社にも、大規模な古本ビジネススキームを構築したり、SDGsなリサイクルビジネスとして仕掛けたり、メディアうけする古民家とかアップサイクルとかマルシェとかやってみたり、なんかそういうのもあるけれど、それと「古本屋」の世界とは違う。そういうのじゃなくて、「古本屋」ならやりたいと思ったから、脱落サラリーマンだった自分はがんばれたのに、「社長」の世界に来たことで、いつのまにかそういうのに近い世界に絡め取られてしまいそうになっている。会社はきちんと続けたい、育てたい、スタッフに給料をたくさん払えるようになりたい。でもなんかそういうのじゃないんだ。そうのじゃないけど「古本屋」であるという会社。なんとかそれになれないのか。そんな道を見つけられないものか!