日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

1月9日(土) 「ご来店お待ちしています」

出かけようと思ったら防災無線が始まり、「外出自粛を徹底してください」と市長の声。しかたないけれど、理解してはいるけれど、今から「ご来店お待ちしています」とツイートしていいのかな、と、心が絡まりながら出勤。外国語での防災無線が続いている。

朝から新倉庫をめぐり一騒動。モヤモヤする点はありつつも、一歩前に進んだことを良しとする。今月中にいったん空っぽにして、2月の2週間くらいで基本の工事は終えましょう、と打ち合わせる。夏頃に動き始めたプロジェクトが、ようやく形になりはじめる。

それにしても新倉庫にはまだ電気も何もないので物凄く寒い。本の整理を進めなければならないけれど、ほぼ屋外なので、とにかく寒い。先日買ったモンベルの冬山登山用の靴下が頼もしい。キャンプ用に揃えたアウトドア装備と、カセットボンベのストーブ、それにマグマカイロをお供に、地道に作業を進める。

途中、復刻版の高村光太郎『道程』に出会う。年初に噛みしめた「牛」の詩が載る本だ。ふと開くと「冬の詩」だった。暗くて凍える倉庫で、作業ライトの下で読む「冬の詩」は格別だった。

冬だ、冬だ、何処もかも冬だ
見渡すかぎり冬だ
その中を僕はゆく
たつた一人で

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入口も裏口も全開で、エアコンの暖房が寒さと闘うものの敗北している店に、それでも足を運んでくださるお客様はいらっしゃって、いつもの冬の週末くらいの売上になる。本当にありがたいし、とても嬉しい。

不安ばかりの日々のなかで、お客様が本を手に取ってくださる姿、よい本を見つけて買ってくださる姿を見ることは、なにより心を安定させてくれる。

いま、ご来店があること、売上があることは、悪だろうか。