日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

7月2日(木) ハローワークの三階

レジ袋有料化の初日。そうか今日からでしたか!と驚かれる方や、エコバッグ作ってくださいよと提案してくださる方や、気にせず5円で袋を買われる方など、反応はそれぞれながら大きなトラブルはなく過ぎた。

ただ、いつも均一本だけをたくさん買ってくださる常連さんは、今日から袋が有料になってしまったんです、という説明に一瞬言葉を失われ、しばし迷った後、明日なにか袋を持って取りに来ますので預かってください、と言われた。50円の文庫を大切に選ぶ彼にとっての5円の大きさが痛いほどわかるだけに、スタッフもみな胸が苦しくなった。なんとかしたいね、と話すうち、買取のお客様が本を入れてこられる紙袋をとっておいて「ご自由にお使いください」って置きましょう!ということになった。

 

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労働保険の年度更新と、新スタッフさんの雇用保険加入手続きのために行ったハローワークの建物。仕事を探す人、失業手当を求める人、人を雇う人。それぞれにシリアスな事情を抱えた人々が無言で交錯する。今日は、これまでで一番、失業認定を求める人が多かった気がして、コロナ禍を感じる。外国の人も多かった。

わたし自身、11年前は一階のパソコンで仕事を探したし、失業認定日には二階に通った。ここは、無職で無価値の(と思っていた)自分に向き合わされる場所であり、暗く重苦しい空気に押し潰されるようで、なるべく足を向けたくない場所だった。外部組織の事務所で職業適性検査を受けたり(銀行頭取か探偵か振付師が向いていると言われた)、講座でデジタルアーキビストなるものを取ってみたりして、なるべくパソコン検索をしなくても認定の点数が稼げるようにしたものだった(どうせ自分が応募できるような仕事は見つからないのだ)。

そこから11年後の今日は、三階へ行く。毎回の手続きは面倒で、保険料の負担も大きい。けれど、三階に来られることの幸せもまた、しみじみと感じる。階段を上り下りするたび、俯いて歩くあの日の自分とすれ違う気がする。奢らず精進しよう、と思う。スタッフを幸せにしよう、と思う。