日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

4月2日(金) ほどよ古書店

やっと、年金事務所社会保険加入の手続きを終えた。山積する事務手続きの中で、一番気を重くさせられていた強敵を倒せたので、少しだけ気持ちが楽になった。スタッフも、われわれも、ついに協会けんぽと厚生年金になったんだな。会社を辞めてから13年。自力で加入したぞ、厚生年金。

その後は、すっかり行き慣れたハローワークへ。先週、労働基準監督署とともに法人成りの手続きは済ませてあったけれど、今月から雇用保険加入するアルバイトさんがいるのでその手続きに。駐車場にはいつもの倍、交通整理の方がいて、建物の中もなんとなくざわついている。適用課も15人待ちなんて初めてのこと。とはいえ手際よく進めてくださり、さほど待った感じはせず完了。

もうしばらくは続く、事務手続き。気を使いながら手書きで欄を埋め、印鑑を押し、必要書類を揃えることの連続は、なにより気持ちが削られるのがしんどい。本の値付けのことばかり気にかけられる日が待ち遠しくてたまらない。

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昨夜の「ハライチのターン」を聞いていたら、岩井が、疲れてクタクタの仕事の合間に行った洋食屋が「ほどよ店」だった、と話していた。人の良さそうな店主のお爺さんが気になってしまうような老舗ではなく、かと言って、見たこともない珍しいメニューが並ぶ新しい店ではなく。細やかに気を遣われないけれど干渉もしてこない接客で。オーソドックスなメニューが、良心的な値段で揃っていて、期待以上でも以下でもない見た目と味で供される店。クタクタに疲れているときにちょうどいい、程よい店=ほどよ店。

「「ほどよ店」を目指してるお店ってあるのかな」と笑いながら2人は話していたけれど、聴きながらわたしは、まさに自分が目指しているのは「ほどよ古書店」だよなと思っていた。

気張って行く敷居の高い店ではなく、本を見たいなあ、くらいの気持ちで立ち寄れる店。店内は広すぎず、かといって店主の目が気になるほど狭くはなく、耳障りにならない程度の音楽が流れていて、なんとなく、棚を見ていると、ふと目にとまる本があって、手にとると思っていたより小綺麗で、値段も予想より少し安くて、じゃあ今日はこれ買って帰って読んでみようかな、と思うような、古本屋。

思うに「程よい」というのは、実はとても高い要求で、少しでもマイナスポイントが目につくと「程よくない」ことになってしまう。店が暑い寒い埃っぽい臭い、店員の対応が悪い、なんとなく割高だ、そして、欲しくなる本が無い。お客様がそれぞれに気になるであろう様々なマイナスポイントに気を配って、そう思われないように努力する、し続けることでしか「程よい」レベルは保てない。

そしてなにより古書店の本質として、品揃えの面白さで常に期待を上回らなければ、最低限の満足もしていただけないことになる。人気の老舗料理店の「変わらない味」というのは実は常にアップデートを続けていて、それを怠ると「味が落ちたね」と言われる、という店主の言葉を目にして以来、努力はし続けなければならないのだと肝に銘じている。

疲れたときこそ立ち寄りたくなる「ほどよ古書店」であるために、明日もやることがいっぱいある。

 

2021年4月1日(木)24:00~25:00 | ハライチのターン! | TBSラジオ | radiko