日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

1月28日(土)

横尾忠則のY字路の真ん中にあるような三角形の小さな店の奥にわたしは座っている。ふらりと入ってきた男性が、いつからやってるんですか?と尋ね、少し前から、と答える。〇〇新聞の者なんですが取材いいですか、とおもむろに続け、どうしてここで店を?お客さん来ますか?と聞く。前の店はいいところにあったし広かったんですが、この場所でこの小さな店ではとても食べていけませんよ、と答えながら、前の店ーー美殿町の今の店ーーを懐かしんでいる……という夢を見て目覚めた。なんとなく切なく、どうしてこんな夢を見たんだろう、という思いが残った。

 

車にうっすら雪が凍りついている。まちじゅうが冷え切っていて、晴れていても空気は刺すように痛い。

それなのに開店からお客様が次々足を運んでくださる。

開店してすぐに、通販に出したばかりの『ベリー公のいとも美しき時祷書』をご覧になりたいというお客様がいらっしゃり、そのまま買ってくださる。ずっと探していて、東京の古本屋にあるのは知ってたんだけど、今日見てみたらこちらにあって、近いから来てみたんです、と、にこにこと仰る。思い入れのある、高価な本が、お近くにお住まいの方に、すぐ売れていく。ぜんぶの要素が嬉しい。

作業場で仕事していた昼過ぎから閉店までの間もお客様は途絶えなかったそうで、思いがけず売上も立っていた。寒さも暑さも、店売りには大きく響いてしまうのは仕方ないとはいえ、しんどいものなので、本当にありがたい。

 

スタッフが店番してくれている間に、静岡で仕入れた本の仕分けはもくもく進み、店用、通販用の値付けと並行して、来週火曜に持っていく予定の正文館書店への追加分もできてきた。明日のアルバイトさんに、一気に本のメンテナンスと値札貼りをしてもらう。

……ほんとうに、自分一人、太閤堂と二人では、絶対にできないことばかりだ。

自分たちがやりたいと思うこと、こうありたいと思う古本屋の姿を実現させるためには、今のようにたくさんのスタッフの力を借りねばならないのだ、ということをしみじみと感じながら、今朝見た夢のなかで感じた寂しさを思い出していた。

人を雇うのって大変ですよね、他人と働くのってストレスじゃないですか、せっかく気ままに働ける仕事なのに不自由じゃないですか、社会保険料もあるし人件費の負担すごいでしょう。

よく言われるけれど、今のわれわれには、今以外のやり方は想像できない。明日も店に足を運びたい、ぜひこの店に本を譲りたい、と思ってもらえる店であるためには、われわれ夫婦だけの力ではまったく足りないのだ。

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  • 今日聴いたもの…ミルクボーイの煩悩の塊(淀ちゃん、と呼んでいた鯨が死んで1日も経たないうちに「悪臭が」とか言い出すのはおかしくないか、と主張する駒場の優しさ)、爆笑問題カーボーイ(2匹の猫を鍵をかけた部屋で隔離してる理由を話す太田さんの可愛らしさ)