日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

4月5日(日) 本への渇望

店の棚に並んでいる本や、棚に並べるはずだった本を、なんとかネット販売できないかと、倉庫から100均まつり用の棚や、イベント出店用のパネルを店に持ち込んで試行錯誤。なるべくわかりやすくて魅力的な方法はないものか、あれこれ試してみる。

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ふと、入口ドアの向こうに気配を感じて、見ると、時々ご来店くださる近くのお店フィールドさんのご主人だった。慌ててドアを開けてご挨拶をする。

「昨日もお休みだったでしょう、それで今日もお休みだったから、張り紙を読もうと思って」お客様にもスタッフにも何事も起きないうちにと思い、悩んだのですが休むことにしたのです、とお伝えすると、大きく頷いてくださる。

「なにせ図書館も休みでしょう、本に出会えないものだから」

昨日は、毎週末にご来店くださる常連さんからお電話があった。今月いっぱいお休みさせていただいている旨お伝えすると、「ええっ!!」と大声を上げられたあと、しばらく黙ってしまわれた。

「…そんな…図書館も閉まっとるし、どうしたらいいんや…」

毎晩晩酌を楽しむ方にとってのお酒のように、骨の髄から本が好きな方にとっての本とは、毎日の生活のなかで欠かせないものであり、図書館や古本屋に足を運ぶことは、スーパーに通うくらい自然な、日常の一部になっている。その一端を担えている幸せを、毎週、あるいは毎日のように姿を拝見しながら噛みしめてきたのが、わたしの日常だった。

非日常が日常となってしまった今。わたしはそうした大切なお客様に何ができるだろう。ネット販売をがんばる、というのが単純明快な答えとはいえ、常連さんの中には、インターネットに触れずに暮らすお客様もいらっしゃる。

晴れて、またこのドアを開けられる日が来たら、顔の浮かぶたくさんのお客様たち好みの、あのジャンル、あの作家、あの本を、ばっちり揃えた棚でお迎えして、びっくりさせたい。欲しい本ばっかりで困るよ!と、満面の笑みで怒られたい。

薄暗い店でひとり、いつお客様に見ていただけるかわからない本に値段をつけ続けるのは、なかなか苦しい。でもきっと、その日は来る。

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