こんなことは今まで一度もなかったのだけれど、昨日の閉店時刻あたりになって、はっ、と気づいた。25日を過ぎているのにスタッフさんたちのお給料を振り込んでいない。イレギュラーなかたちでの税理士さんの月末監査が終わってほっとしてしまい、振込手続きをすっかり忘れてしまっていた。ダメすぎる。今日はまずその手続きから始める。
忘れていてごめんなさい、と謝りつつ明細を渡すと、あれっ、もうそんな時期でしたか?!と、スタッフさんも驚いている。お互い、日付や曜日の感覚がなくなってしまっている。
1日1日を全力で過ごしているせいか、時の流れが速い。その1日ずつが、ずしんと重い。
店と事務所、休憩室兼会議室の分と、倉庫、駐車場の家賃を振り込む。
今朝、先日取材していただいた記事が掲載された。
https://www.gifu-np.co.jp/news/20200427/20200427-235768.html
主に営業を続ける新刊書店さんの苦悩に焦点が当てられていて、当店については末尾に少し触れていただいた。記事を読み、今の現場の苦悩としては絶対に、新刊書店さんの方が大きいと改めて思う。
夕方、「大学時代の同級生の方が注文してくださいましたよー」とスタッフさんに言われ渡された伝票を見ると、確かに、同じ専攻を卒業した同級生の名前だった。20年以上ぶりなんじゃないか。「記事を読み、古本屋さんとして奮闘されていると知りました。ささやかですが応援しています」と、数千円の本を注文してくれていた。いい本を、ありがとう。
じんわりと、学生時代のことを思い出す。彼は学生プロレスをやっていて、学祭のときに屋外試合を観にいったら、ターナー・ザ・インサートという人気レスラーも出ていて確かにかっこよかったな、とか、卒業式のときにバイト先から人力車を持ってきてくれて、みんなで袴姿で乗って写真撮らせてもらったな、とか。大学生ぽい記憶が蘇ってきて笑える。
岐阜の書店を取材した記事にもかかわらずYahoo!ニュースのトピックスにも入っていたり、コメントもたくさんついていたりして、SNSでも反響があるのを感じた。激しく批判的なコメントも見かけなかった。良い記事を書いてくださった記者さんをありがたく思う。
この休業の日々になってから、以前お世話になったけれど最近は連絡をとっていなかった方や、旧店舗時代のお客様、長い常連の方、いつか行きたいと思ってくださっていたというお客様まで、思いがけない再会や出会いが続いている。
徒然舎は、お客様にこちらから積極的に話しかける店ではないので、こんなことでもなければ聞くことはなかったであろう嬉しいことばを、たくさんいただいている。そんなに大切に思ってくださっていたなんて、と、身に余る言葉に恐縮することもある。感謝の気持ちを込めてお返事を書くものの、この胸いっぱいのありがたさを伝え切れなくて歯痒い。
金銭的には厳しいけれど、実は、心は、いつも以上に幸せな気持ちで満たされているような気さえする。こつこつと、自分なりに誠実に店を続けてきてよかった、と思う。きっと大丈夫だ、と思う。そして店を再開する日が来たら、恩返しの気持ちでもっともっと良い店にしていくんだ。
月曜日だからか、車は多かった気がする。天気がいいせいか、自転車も。嬉しいけれど嬉しくないような複雑な気持ちはまだ生じる。