日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

5月4日(土)

心の支えが昨日とれたので今日は比較的よい目覚め。簡単な弁当も作る。太閤堂の寝違えも少しは良くなった様子。

朝礼のあとメールを確認すると、昨日注文した県図書館の依頼図書の返信が大量に届いている。古書店ごとに注文への対応が違うので、慎重に確認していかないといけない。先払いがあったり、メール返信で正式注文の店があったり。

直近から順に処理していくと、昨夜の、うちの店への注文メールに当たった。見覚えのある名前。その注文にある大学名と合わせて名前を検索すると、当時を思い出せる横顔の写真が現れた。ああ、やっぱり彼だ。学生時代、真面目なことも馬鹿なことも一緒にやった仲間の一人。しばらく迷ったが、思い切って、お礼のメールを書いた。覚えていますか?

気づけば開店時刻になってしまっていて、慌てて新入荷ワゴンの本を棚に差し始める。本を差しながら手入れをしていくが、とにかく棚が物足りない。店を空けてイベントに出ていたことを後悔しそうになりながら、できる限り、最善を尽くす。

終えて、すぐさま本の仕分けと値付けへ。とにかくこの仕事に近道はない。日々こつこつと本を触って積み上げていくのみ。

15時になりそうだったので急いで昼にする。冷凍そばを解凍した蕎麦に、海苔とネギをかけたぶっかけ蕎麦と、できあいの卵焼き、ゆでたスナップエンドウ。タンパク源のひきわり納豆。「本日はダイアンなりシーズン2」神戸編の続きから。

その後も作業。時々店に呼ばれて買取持込の査定をしたり、店から下げた本を処理したり、買取のご相談に対応したりする。今日もまた、まちや店内がなんとなくざわついていて落ち着かない空気が漂いがちになっている。「本って読まないんだよねーわたしー」と大声で話しながら入店してきた女子たちに戸惑う(店をぐるっと通り抜けて帰られた)。

今日もまた居酒屋が賑やかになってきたので、18時に店に戻る。宅配買取の常連さんに振込をしたりしていると、メールが届く。昼に送った、彼からの返信だ。わたしを覚えていてくれていた。驚きながらも、店を褒めてくれ、そして、学生時代に作っていたホームページに触れてくれた。……それは『文學のためにできること。』という、今思えばなんとも恥ずかしいばかりの、自分にとっては黒歴史のようなホームページ名のもので、新聞各紙に載った文学関係の記事をスクラップして、ジャンルに分けて掲載していくというものだった。今ならすぐに作れてしまうものだろうし、そもそも情報の検索やアクセスの容易さは物凄い進歩を遂げた。しかし当時は、その情報の集積に意義を感じて、手作業で新聞を切抜き、友人の力も借りて手入力して作っていたのだった。……そのホームページのことは、同じように、注文してくれたことからメールをやり取りできた仲間の先輩からも言われていた。ふたりともタイトルもきちんと覚えてくれていた。彼も、先輩も、今や文学を専攻する教授なのだ。教授が覚えてくれているなんて、わたしが学生時代に学生として残せた成果は、このホームページだったんじゃないだろうか。

それにしても。大学卒業から25年以上経って、彼らは文学研究者として、わたしは文学の本を売る古本屋として、再会できたということの感慨深さたるや。その間、約10年サラリーマンだったり、バツイチになっていたり、しているのだけれど、ぐるっとまわって、戻るべき場所に戻り、立つべき場所に立っていたら、再び会うべき人に会えたような思いになる。遠回りだったかもしれないけれど、ここに辿り着けてよかった、と、思う。

f:id:tsurezuresha-diary:20240505014459j:image