心が揺さぶられ、苦しい一日だった。
開店前、月末に予定している棚卸についてスタッフBさんと話しているうち、税理士さんに確認できていないことがあるのに気づく。あるいは、わたしが理解できていないこと。書籍独自の「委託」について、在庫の考え方と、買掛金の考え方と。休日に申し訳なかったけれど忘れないうちにと税理士さんに連絡しておく。
ガラスケース本を撮影してから新入荷ワゴンに手をつけるが、すぐに開店時間になってしまい、一段分入れたところで諦める。
値札づくりを一区切りさせるため、昨日に続いて進める。
風が強い。作業場と行き来するたび、冷たい風が刺してきて、身体がガクガクする。それなりに暖かい格好をしてきたはずなのに、耐えられない。
突然、すぐ近くで衝突事故が起きたような音がする。工事業者もよく見かける商店街なので、またどこかで工事してるのかな?と思っていたら、太閤堂が「屋上のアンテナが折れた」と駆け込んでくる。裏口から出ると、お隣のオグテイさんが、お客様をお見送りしていたらこれが落ちてきて、と、根本が折れたアルミの棒のようなものを見せてくださる。見上げると、ビルの屋上にある大きなアンテナが、中央でくの字に曲がり、お辞儀したようになってしまっている。すぐにビルのグループLINEに連絡し、コートとマフラーをつけてから屋上に上がる。太閤堂が梯子を登りアンテナに近づいてみるが、重いし複雑にワイヤーが絡まっていて、何もできそうにない。そうこうするうち、明日、業者を手配したとの連絡をもらい、とにかくそこまでもってくれればと、これ以上折れないでくれ、と、祈る。
値札づくりをするうち、某有名大手が別名義で「日本の古本屋」に出品していることに気づき、感情が込み上げ、わなわなしてしまう。なぜ入会が認められたのか。弱小な自分たちを守るためにつくった古書組合に、資本金1,000万従業員数十名年商億単位であろう株式会社を入れるメリットはなんなのか。ようやく認知度が高まってきた「日本の古本屋」の、Amazonマーケットプレイスとの違い、優位点を、自ら手放すことになってしまうのではないか。ぼんやりしている場合ではない。理事会、総会で、きちんと議論してもらいたい!と強く思う……けれど、今は何もできないのだし、ひとまず忘れよう、仕事に集中しよう、落ち着け、と、自分に言い聞かせる。
作業場で仕分けを進めるうち閉店時間となり、店に戻る。終礼の後、武藤良子個展「百椿図」の撤収を、太閤堂とふたりで。
絵の取扱いにびくびくしてしまうので、絵を壁から剥がしてトレーシングペーパーを被せる作業は太閤堂にお任せし、私はその他の片付けを。2週間、あっという間だったけれど、ほんとうに貴重な時間だった。それにしても期間中、いろいろな要素でなにかとバタバタすることが多くて、どっぷり浸って鑑賞する時間は取れなかったな、と、撤収しながら感傷的になる。片付けながら手元で見る絵はまた違って見える。
ある程度作業が進んできたところで、これからの仕事の進め方について太閤堂と話し始める。ありがたいことに出張買取や宅配買取の話が増えてきている一方で、どうしても太閤堂ばかりに負担が集中せざるを得ない大市が控えている。なんとかわたしやスタッフも分担することで乗り越えたいのだが、仕事の優先順位や捉え方、考え方にズレがあって、なかなかうまくいかずにいる。われわれの方針の見えなさ、計画性の無さ(に見えてしまうこと)のせいで、そのフォローをすることになるスタッフは、大きなストレスになってしまっている。これまで何度も問題になり、膝を突き合わせて話し合い、なんとか乗り越えてきたことが、また再燃してしまいそうだ。それぞれが真面目に仕事に取り組んでいるからこその衝突。
焦る、苦しい、けれど、的確に着実に誠実に、それは改善していくしかない。外向きに日記なんて書いてる場合じゃない、やるべきことをやれということだ。