日日古本屋

岐阜の古書店・徒然舎店主の日乗です

4月4日(日) バックヤードにも思い出は積もる

暗い雨の日曜日。ほんとうに、春なのに毎週末が雨だ。もちろんガックリ売り上げが落ちるので、商店主としてはやり切れない気持ちだけれど、春の歓びのままに走ってしまう我々の気持ちに水を差しているのだとしたら、このご時世、悪いことばかりとも言い切れない気がして、口をつぐむ。

昨日仕事中に水没させた携帯が、一晩経ってもどうにも直らなかったというスタッフが、有休をとって携帯ショップに行くことになる。水没直後、なんとかする知恵はないものかと皆で話していたとき、「生米に突っ込むといいって聞いたことあります」と言ったスタッフがいて、めちゃくちゃ笑う。最新機器と生米が突如結びつき、土俗的に響く言い伝え。携帯は、海苔に入っていた大きなシリカゲルと共に一晩、密封したそうだが効果は薄かったらしい。生米にすれば違ったかしら。

昨年初夏まで一緒に働いていた元スタッフが突然、来店。ご家族の仕事の都合で東濃に引っ越すことになり、とても残念そうに辞めていった彼女。昨秋の名古屋でのイベントにも顔を出してくれた。「こうやって、ふらっと立ち寄れるのが嬉しいです」と言ってくれて、わたしも嬉しくなる。

彼女が塗るのを手伝ってくれた本棚は、まだ青いままだ。この店のあちこちに、これまで一緒に働いてくれたスタッフたちの痕跡がのこっている。二度と会わないままの人もいるけれど、楽しかったことも、そうでなかったことも、たくさん覚えているし、あらゆることが徒然舎とわたしをここまで育ててくれることになったのだと、いつもありがたく思う。たくさんの痕跡たちとは、これからも共に在り、共に歩いていく。

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お客様も途絶えた閉店時刻前、ふと思い出して、すぐそこを走っている聖火リレーのネット中継をスタッフと一緒に見た。雨の金華山、大変そう!走るなって止められてる!トーチのまま城に入ってる!危ない!なんて笑い合った。初めて聖火リレーなんて見ましたよ、わたしもだよ、なんて言い合っていたら、なんだか満ち足りた気持ちになっていた。