今日は、月に一度ある運営担当の市場。ウィズコロナ対応のスタイルで6月に再開してから、われわれは3回目の運営。
マスクや検温はもちろんのこと、古本屋同士の接触は最低限となるよう配慮され、会館内での飲食も禁止。みんなでお弁当を食べながら報告や相談をすることも無くなった。来場者は黙々と入札したら退館し、開札作業はその日の運営担当者だけで行い、終わったら電話で呼び出されて会計と積込を行うというスタイル。
無駄を省き、本の売買を安全に行うことを一番にして、古書組合として検討した最善のスタイルでの運営。さらにそのスタイルは、少しずつアップデートされている。
わがままで勝手気儘な古本屋たちがワイワイガヤガヤと「密」に集う市場を見られなくなって数ヶ月。この運営スタイルにも慣れてきたなあと思った今日、ふっと、寂しさが湧いてきた。
癖があって、聞き分けのない、面倒な、古本屋たちの「良さ」に出会えない寂しさ。
13時になったらきちんと退館して、呼ばれるまで会館の外でうろうろしていたりして、作業が終わったらサラッと帰っていく、「聞き分けのよい」古本屋たち。それはこのコロナ禍のいま、正しいことなのだけれど、みんなとことんマイペースなせいでなんだかんだと調子が狂い、イライラ怒っていたあの頃の市場を懐かしく思うようになってしまった。
つくづく、古本屋にとって市場は、本を売り買いできればいいだけの場所ではなくて、お客さんには見せない顔を見せ合って、珍しい本の山をめぐって真剣勝負をしたり、ああだこうだと蘊蓄を述べ合ったり、何十年の付き合いだからこそのいじり合いをしたりする古本屋たちがいてこそ活き活きする場所だったのだな、とわかった気がした。
聞き分けのよい古本屋たちが、大人しくしている市場は、やっぱり寂しい。みんな大声でガハガハ笑っているあの騒々しい市場が、また戻ってくる日が待ち遠しい。